従来は新卒で就職した企業に定年退職まで勤め上げるのが、標準的な従業員のモデルケースとされてきました。しかし最近では企業の知名度より、働きがいのある職場を求めて転職する人が多くなっており、企業では従業員の定着率アップのための施策が必要性が高まりつつあります。
その中でエンゲージメントサーベイと呼ばれる調査が、施策のひとつとして注目されています。今回はエンゲージメントサーベイの意味や方法、実施する上でのメリット、デメリットを解説。さらにツールを選択する上での比較ポイントを紹介します。
【エンゲージメントサーベイとは】
まず、エンゲージメントサーベイの意味を理解することから始めましょう。
●エンゲージメントサーベイの意味
企業活動でのエンゲージメントとは、従業員と企業との関係を意味します。エンゲージメントが高い状態とは、従業員が自らの意志で組織に貢献しようと、仕事に打ち込んでいることです。
エンゲージメント要素のひとつが従業員満足度であり、その他にも愛着心や思い入れなど、エンゲージメントには色々な感情が含まれます。
エンゲージメントサーベイとは、従業員の組織や仕事に対する貢献意欲を定量化して可視化する調査のことです。エンゲージメントサーベイの数値が高いほど離職率が低く、企業の成長率が高いとみなされます。
●エンゲージメントサーベイと他のサーベイとの違い
人材管理に関係するサーベイは、調査の目的や調査の頻度により数種類あります。
・調査の目的によるもの
調査の目的による主なサーベイは以下の4つです。
- モラールサーベイ
- 従業員満足度調査
- ストレスチェック
- エンゲージメントサーベイ
モラールサーベイは、従業員で構成される組織全体でのやる気を数値化、従業員満足度調査は、企業から与えられた現状に対する従業員の満足度、ストレスチェックは従業員の精神状態から組織全体のストレスレベルを計測します。
調査結果が組織全体のスコアとして現れ、個人レベルのものではない点がいずれのサーベイでも共通する点といえます。
・調査の頻度が違うもの
質問は総合的な内容を中心とした数十問で構成され、半年から1年に1回のペースで実施するサーベイをセンサスと呼び、エンゲージメントサーベイもセンサスに属します。
センサスの対称となるものが、比較的少ない設問数で月次・週次など短い間隔で調査を実施するパルスサーベイです。パルスサーベイでは組織の中の個人の状況や課題が見つけやすいので、出来るだけ回答者を特定できる状況での実施がよいとされます。
【エンゲージメントサーベイの目的】
エンゲージメントサーベイを実施する目的とは何でしょうか、大きく4つ考えられます。
●組織と従業員の関係性の見える化
従業員が組織に抱く期待と現実のギャップを把握することで、組織と従業員の関係を明確にするために利用します。エンゲージメントサーベイでは、互いの関係性が客観的な指標となって現れます。
●隠れた課題の検知
エンゲージメントサーベイは、人事担当やマネジメントには見えにくい課題を探し出すことも可能です。上司と部下、部署間などの対人関係の悩みなど、匿名の調査だからこそ課題が見つかる可能性が高いといえます。
●調査結果を人事施策に活かす
調査結果を分析し現状把握することも、エンゲージメントサーベイを実施する目的です。
制度改革や環境整備などの、具体的な施策にも結びつけることができます。
●調査結果を組織運営に活かす
エンゲージメントサーベイの結果を、組織運営に活かすことも重要です。調査結果をチーム内で話し合えば、従業員にとっても組織課題が人ごとではなくなり、働きがいある組織の構築につながると考えられます。
【エンゲージメントサーベイのメリット・デメリット】
エンゲージメントサーベイを実施する上でのメリット、デメリットも確認しましょう。
●メリット
エンゲージメントサーベイの、主要なメリットは以下3つです。
・生産性向上
調査結果から従業員のスキルが測れるため、適材適所へ配置が可能となり、従業員はもとより企業全体での生産性向上が見込めるようになります。
・離職防止
サーベイにより従業員の本音がわかるようになり、的確なフォローアップ方法の発見につながります。その結果、従業員満足度の向上によって離職率が下がり、定着率のアップが期待できます。
・リファラル採用の成果アップ
リファラル採用とは従業員の友人や知人を紹介してもらう採用方法で、優秀な人材を効率的に採用できる手法として知られています。エンゲージメントサーベイの実施を繰り返すうちにエンゲージメントが高くなった従業員は、自分の知り合いに自社への入社を積極的に勧める可能性が高まります。エンゲージが高い従業員が増えれば紹介数も増えて、リファラル採用の成果向上につながります。
●デメリット
エンゲージメントサーベイを実施する上でのデメリットも確認しましょう。
・費用がかかる
エンゲージメントサーベイツールを導入する場合は、まとまった費用が必要になります。自社で設問の設定・分析・課題抽出を行う場合でも、人事担当の残業が増えるなど人件費の割り増しは考慮しておく必要があります。
・時間がかかる
エンゲージメントサーベイを成功させるには、十分な準備期間が必要となります。さらに質問数によっては回答時間が取られるため、対象となる従業員の負担になる可能性も否めません。
【エンゲージメントサーベイの流れ】
エンゲージメントサーベイを実施する流れを解説していきます。
●調査前
エンゲージメントサーベイの調査前に行うことは、次の2つです。
・アンケート作成は内製か外部ツール導入か
エンゲージメントサーベイを実施する自社の目的を確認した上で、アンケートの作成方法を決定します。内製すれば費用が抑えられるように感じますが、継続して調査を行うなら、アンケートの作成や調査・管理が行えるツールの活用をおすすめします。
作成方法が決まったらアンケートの作成です。回答に負担とならない程度の質問数に抑えるように設定しましょう。
・対象となる従業員に説明
次に、エンゲージメントサーベイの目的や調査結果のフィードバック方法や活用方法などを、対象となる従業員に説明します。あやふやのまま始めると協力体制の確立が難しくなるため、必ず事前に説明する機会を設けることが大切です。
●調査実施
エンゲージメントサーベイ実施の流れは次の3つです。
・アンケート送付
アンケートを対象者に送付します。エンゲージメントツールを活用していれば、自動通知を設定できるので効率的に送れます。
・リマインドも忘れない
アンケート提出締切日まで定期的に進捗管理しながら、必要に応じて対象者にリマインドを行います。ツールを活用している場合は、リマインドする期日を前もって設定できます。
・アンケート集計と結果の分析
アンケートの集計は迅速に行います。エンゲージメントスコアが高さの分析のみならず、他データとクロス集計するなど分析の角度を変えてみることも必要です。
●調査後
エンゲージメントサーベイ実施後に行うことは次の2つとなります。
・施策へつなげるための検討
従業員が自ら働きやすい環境を考えるきっかけになるように、対象者だけでなく全従業員にも調査結果を共有します。結果を元に問題点や課題を洗い出し、具体的な改善策を打ち出していきます。
・継続して取り組む
エンゲージメントサーベイは半年から1年ごとに継続して行うべき調査です。実施計画を立てて定期的に行うように意識を心がけましょう。
【エンゲージメントサーベイツールの比較ポイント】
エンゲージメントサーベイを効率的に行うために有益なのが、エンゲージメントサーベイツールの導入です。ここではツールの比較ポイントを解説します。
●機能詳細
まずは自社の目的を達成できる機能が搭載されているかどうかを確認します。アンケートをカスタマイズするときの柔軟性、結果の集計だけでなく分析機能もあるのかなどのチェックポイントをあげて、候補となるツール同志で比較しましょう。
●費用
搭載している機能の充実度や、ユーザー人数での課金か月額料金かなど、ツールによってかかる費用が異なります。自社の予算内で運用できるかを比較しましょう。
●使いやすさ
エンゲージメントサーベイツールは、誰にでも使いやすいことが重要です。ツールによっては導入前の現状分析のサポートを受けられるものや、調査分析後のコンサルティングサポートがつくなどさまざま。どこまでサポートしてほしいのか、自社のレベル感を見極めてツールを比較します。
【まとめ〜エンゲージメントサーベイで働きがいのある組織を確立しよう】
エンゲージメントサーベイを継続して行い、その都度結果を真摯に受け止め改善に努めていけば、いずれ働きがいある組織を確立できるでしょう。
速やかに結果を出すには、エンゲージメントサーベイツールを導入して行うことがベストです。ツールをお探しの際は見え辛い人間の深層部分の定量化に長け、30年の信頼実績を誇るHyouman Boxをご検討ください。