仕事の指導役としてだけではなく、精神面のサポートも行う「メンター」という役割が最近注目されています。
人材育成や定着率向上の観点から、メンター制度を導入する企業が増えているのも事実です。
しかし、「突然メンターに任命された…」、「メンター制度を導入したいけれどどう進めて良いかわからない…」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、メンターの役割と期待される効果、メンタリングを行ううえでのポイントについてご紹介します。
メンターとは
まず、メンターの概要と役割を解説します。
●メンターの概要
メンター(Mentor)とは、日本語の「メンタル」と同じ語源の言葉で、精神的に相手を導く役割のことを指します。また、指導を受ける側のことは「メンティー」と呼ばれます。
ビジネスにおいては、若手社員や後輩社員などのメンティーに対して、メンター自身がキャリアや業務のお手本となる存在になることを指します。
●メンターの役割
メンターは実務的なトレーニングだけではなく、より精神的な部分にまでに及ぶ支援を行います。
メンターとメンティの多くは、同じ部署内ではなく、部署をまたいだ先輩と後輩の間で構成されます。交わす会話は雑談レベルの気軽なコミュニケーションから上司には直接話しにくいことなど、私的な問題まで多岐にわたります。
メンターに期待できる効果
メンターに期待される効果はどういったものがあるのでしょうか?ここでは主に三つに絞って解説します。
●若手社員の離職防止
若手社員の離職率は昨今上昇しています。令和2年10月30日に厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、平成29年3月卒業の大卒者と高卒者の3年以内の離職率平均は、大卒32.8%、高卒39.5%です。
これにはさまざまな理由があると言われていますが、離職原因の早期発見、対策は必要不可欠でしょう。メンター制度では新入社員の離職原因を早期に拾うきっかけを作ることができます。
●自発的に行動し、成長できる人材の育成
メンタリングは、メンティー自身が自らの課題に気づき改善していくコミュニケーションプログラムです。
そのため、業務に直結させながら自律性の高い人材育成にも役立つと考えられています。
●社員間でのコミュニケーション活性化
会社の規模が大きくなればなるほど、違う部署の社員とのコミュニケーションは疎遠になってしまいがち。しかしメンター制度を導入できれば、異なる部署間でのコミュニケーションが活性化され、双方の業務意欲の向上、社内雰囲気の活性化につながるでしょう。
メンター制度のメリット
メンター制度は双方にメリットがあります。それぞれ見ていきましょう。
●メンター側
・メンター自身がキャリア形成を考えるきっかけになる
「自分にはどんな助言ができるか?」と考えることは、これまでの自分の職歴、身につけた技術・知識、成功体験・失敗経験などの仕事を中心とした人生全体を振り返ることになります。その過程で自分の強みや弱点、現在の立ち位置を見直し、今後のキャリアを考えるきっかけに繋がります。
・メンター自身の成長に役立つ
上述したような過程を経て、メンティー自身の振り返りのきっかけにもなるため、それ自体が成長につながります。また、その責任感から生じるメンター自身のモチベーションアップが期待できます。メンタリングを通して、コミュニケーション能力も磨かれ、部下・後輩のマネジメント能力のスキルアップも期待できるでしょう。
●メンティー側
・精神的な支えになる
前述の通り、メンティはメンターの存在によって安心感を抱くことができます。社内ネットワークである「メンター」との関わりによって、他部署の様子や先輩たちの通ってきた道を知ることもできます。
特に仕事に行き詰まったときや、自部署に年齢の近い同僚がいない場合、「メンター」が心の拠り所となり、自身の働き方や今後のキャリア、ワークライフバランスなどを考えるきっかけにもなるでしょう。会社組織や職場環境への適応もいち早く進むはずです。
メンター研修制度を実施する上でのポイント
ここでは、メンター研修制度を行う上で、押さえておきたいポイントを3つ解説します。
●命令や説教はせず「傾聴」を意識すること
メンタリングの際の注意点として、一番重要なことが「一方的なコミュニケーションにならないこと」です。メンタリングのような人を導くコミュニケーションはその構造上、上の立場の人間が下の人間に対して教えを説く図式になりがちです。
ただし、メンター制度はメンティーの自発的な成長を促すことが重要な目的の一つであるはず。メンティーの声をきちんと聞いてあげることを強く意識しましょう。
●「メンター」の担当者が役割に対する理解度・責任感・成長意欲があること
また、メンター研修制度の成果は「メンター」次第で大きく変わります。導入にあたってはメンターという役割に理解のある社員を選任しなければなりません。 では、メンターに求められる資質や能力はどういったものなのでしょうか。大きく分けると二つあると考えられています。
- 「メンターの成長を支援することは、会社としての体力も上げることになる。そしてこの経験は自分自身の成長にもつながる」そうした意義を十分に理解している人物であること
- メンタリングでの会話内容、メンティーから得た個人情報や業務上の秘匿情報などを軽々しく口外しない信頼感のある人物であること
最低限この2つの要素は必要不可欠です。これらの要素にプラスして、メンティーとの相性や適性を考えると、メンターの選定には多くのステップが必要なことがわかります。
●メンタリングでは面談シートなどを使いフィードバック
実際のメンタリングではその内容ももちろん重要ですが、アフターケアも同じくらい大切です。メンター制度は一度で完結するものではなく、継続的に何度も行うイベントです。
そのため、「長期的に見てこの制度が自分に良い作用をしている」と実感することが、双方にとって重要になります。そのため、面談シートなどを用いて、過去を一緒に振り返ることができる工夫を用意しましょう。
メンター制度を活用している企業の事例
実際にメンター制度を活用している企業の例を2つ紹介します。
●就業スタイル特有の問題を解決へと導く(高島屋)
百貨店=大型小売店という業態の高島屋では、従業員の多くがシフト制で勤務しています。そのためOJTを機能的に運用することが難しく、社内でのコミュニケーションも希薄になるという課題がありました。この課題を解決するため、入社4年目の社員を「メンティ」、入社10年目前後の社員を「メンター」にすることで、能力開発、主体的なキャリア形成、マネジメント力の向上を促進しています。
●女性社員の活躍を推進する(ネスレ日本)
女性は、ワークライフバランスが大きな問題になることが多いでしょう。そのため、女性社員のキャリア形成を「メンター」制度で支援する企業が増えています。
ネスレ日本では、女性社員向けの『メンタリングプログラム』に取り組んでいます。さまざまなライフイベントや仕事を経験してきた役員・管理職が「メンター」となって女性社員にアドバイスを実施。また、それと同時に出産・育児休業制度の拡充などで女性社員を手厚くサポートした結果、同社ではマネージャー職の女性比率を40%以上にまで高めることに成功しました。女性社員とメンター制度の親和性の高さが示された一例と言えるでしょう。
メンター制度を導入して企業の体勢を整えよう!
メンターの役割は多岐にわたり、相手がいることを前提とした対人スキルが求められるので、難しい部分も多々あります。
しかし、メンター制度はメンティの支えになり、結果的に企業の基礎体力の底上げにも繋がります。メンターに適した人材を選び、社員の成長を促しましょう!
私たちは適切な人材の選定のために、一人ひとりの非認知能力を可視化することができる「HYOUMAN BOX」というツールを提供しています。
最適なメンターとのマッチングを助けることもできますので、興味のある方はお気軽にお声がけください。