OJTとは〜言葉の意味やOJT制度化のメリット、デメリットを

新卒、中途採用問わず、新入社員の教育手段として、OJT を取り入れる企業が日本でも増えてきました。

現場の状況を単に「見学」させることはOJTにあらず。成果を上げるには計画書作成、OJT制度のマニュアル化、OJTトレーナー研修など、十分な事前準備が必要です。

今回はOJTを行う上でのメリット、デメリットの紹介を含め、その効果的なやり方について考えてみましょう。

【OJTの定義】

まず、OJTの意味を確認することから始めます。

●OJTとは

OJTとはOn the Job Trainingの略語で、職場での実務を通じて業務知識を身につける育成手法のひとつです。

第一次世界大戦の時にアメリカ軍隊が取り入れた4段階職業指導法(”Show, Tell, Do, and Check” method of job instruction=「やってみせて、説明し、やらせてみて、評価する」職業指導法)がOJTの始まりと言われます。なおクイーンズイングリッシュのUKでは、「On the job training」 と言えば問題ありませんが、OJTが通じないことがあるので覚えておいて下さい。

職場の上司や先輩(トレーナー)が新入社員に対して具体的な仕事を与え、仕事のやり方や実務を通して計画的に伝えることが一般的なOJTです。外部研修やマニュアル読破では身につかない実務のやり方を迅速に習得できます。

・OJTの実施期間

最近では入社後の1年間をOJT期間とすることが多く見られます。期間の前半で標準的な作業を教えて、後半では実際に実務を担当させるという進め方がよいでしょう。

・OffJTとの違い

OJTの比較対象になる教育制度がOffJT(Off the job training)です。OffJTとは実務の場を離れて行う研修方法。業界知識やビジネスの基礎などの一般教養を体系的に学べますが、実務を学べる要素はありません。

OffJTで学んだ知識をOJTで繰り返し実践すれば、知識の定着が高まります。そのため、新入社員向けにはOJTとOffJTを組み合わせた育成方法がおすすめです。

その他の教育プログラムでは、オンボーディング(On-boarding) があります。オンボーディングについての詳細はこちらをご一読下さい。

●OJTの目的

OJT制度を設置する目的を確認しましょう。

・生産性の向上

OJTは実務を経験しながら行う研修なので、新入社員は業務の習得、トレーナーは部署の業務を客観的に確認可能です。OJTの制度化により、企業全体の最適化および生産性の向上を見込めます。

・新入社員の不安解消

新入社員はトレーナーと一緒にリアルタイムで実務を学ぶため、疑問点はその場で解決できます。また、一緒に過ごせばトレーナーの人となりも把握できるので、入社時の不安を早期に解消しやすくなるはずです。

・新入社員の定着率向上

OJTが終了すると新入社員は即戦力として、主体的に行動を起こせるようになります。仕事を任せられることでやりがいを感じ、この会社で頑張ろうという気持ちが強くなれば、定着率が向上すると考えられます。

またOJTでコミュニケーションが頻繁になるので、新入社員がトラブルに陥りそうであればトレーナーがそれにいち早く気がつき対応できるはずです。

【OJTを制度化するメリット、デメリット】

日本でも知られてきたOJT。OJTのメリット、デメリットも確認しましょう。

●メリット

メリットは大きく3つ考えられます。

・業務コスト削減

新入社員の入社後OJTを行えば、外部研修の頻度を減少させ、外注コストの削減も行えます。さらに職場を離れずに実務が学べるので、外部研修のように別途時間を取る必要もありません。結果的に業務コストも抑えることにつながります。

・トレーナーの成長

OJTトレーナーを務めることで、トレーナーも一緒に成長できるところもメリットです。トレーナー研修に参加するだけでなく、新入社員の育成のため自らのやり方を試行錯誤することは、通常業務から得られない経験になるはず。この経験がマネジメント力向上につながることも考えられます。

・コミュニケーション力向上

OJTでは新入社員とトレーナーがコミュニケーションを取りながら、実務を行います。研修中、新入社員が放置されることはありません。トレーナーでなくとも部署全体でバックアップするため、全体的なコミュニケーションの活性化が期待できます。

●デメリット

一方、OJTを制度化する上でのデメリットもあります。

・現場の負担増

OJTのトレーナーに任命されると、資料作りや新入社員の指導など、通常業務の他に時間が必要です。そのためトレーナーの負担が増えることも。

全ての業務にOJTが適するわけではありません。OJTの適用範囲は現場任せにせず、人事部門がOJTの効果と現場の負担のバランスを考えて定めましょう。

・新入社員放置の危険性

事前にトレーナー研修を行っても、トレーナーの能力や経験によってOJT効果にばらつきが起きることがあります。トレーナーは任務を全うしているつもりでも、新入社員が放置されていると感じていたら、もはやそれはOJTではありません。

OJTの期間中、上司など第三者によるレビューの機会を設け、トレーナーに改善ポイントを伝えることが大切。トレーナーの気づきとなり、OJTの効果がより確実なものとなるはずです。

【OJTを成功させるやり方、その留意点とは】

最後にOJTを成功させるやり方を解説します。

●計画的なトレーニング実施

場当たり的なOJTでは新卒社員ならともかく、中途採用の新入社員にはそれを見抜かれてしまうことも。トレーナー研修も含め、進捗に合わせた複数トレーニングの実施、さらに振り返り期間も含めたトータルなOJTのやり方を実践するのがおすすめです。

・OJTの計画書作成

トレーナーによってOJTの内容がばらつかないようにするには、OJT計画書の社内マニュアル化が重要な意味を持ちます。

例えば、以下のようなポイントを関係者でよく話し合って作成しましょう。

  • 新入社員の基礎情報の整理
  • OJTで行う業務内容の明確化
  • 実施期間と実施場所
  • 指導方法に関する注意点や禁止事項の記載
  • OJTの最終ゴールと評価方法

計画書は新入社員とも共有し、自分が受けるOJTの全体像を理解してもらうことも必要です。

OJT計画書は一度作ったら完結ではありません。OJT終了後に定期的な見直しを行いましょう。繰り返し計画書のマニュアルを更新することで、その時代に合ったOJTを継続的に行うことができるのです。

●適切な内容でのトレーナー研修

標準レベルのOJTを実施するには、トレーナーを務める社員に対して研修を開催します。トレーナー研修の最大のゴールは、新入社員の成長を支援するという役割を理解することです。最新のOJT計画書に基づく具体的なやり方を適切に伝授するため、OJTトレーナー経験者が講師を務めたり、外部講師に依頼します。

●OJTの目的、目標の共通化

OJTの制度化は、即戦力を多く育てたい経営者にとっても重要な意味があります。OJTの目的・目標の設定や終了後の結果分析には、経営陣もできるだけ関与することが大切。結果としてOJTの成果に違いが現れるはずです。

・評価基準の設定

評価基準は人事部門がOJTの目的を明らかにした上で、客観的な設定が必要です。評価基準が明確であれば新入社員・トレーナーともに努力しやすくなり、おのずから結果がついてくるでしょう。

OJT終了後は、最終的な成果の評価が必要です。多くの企業では、トレーナーの上長にアンケートを行い評価する方法を採用しています。さらに当事者のトレーナーや新入社員にもアンケートを行い、各自が考える達成度や問題点なども合わせて分析するとよいでしょう。

OJTの達成度を客観的に分析するには、HYOUMAN BOXなど専用ツールの活用をおすすめします。

【まとめ:OJTの制度化で、新入社員を即戦力に育てよう】

業務に必要な知識やノウハウを新入社員に伝え、即戦力として育成する方法として優れているOJT。計画書やマニュアルの整備・適切なトレーナーの任命・トレーナー研修の徹底がOJTを成功に導きます。またトレーナー経験者の中から次の管理職候補も見つけられたら、企業にとってもうれしい副産物です。
OJT制度を推進するには、勘や経験に依存することなく、個人や部署、会社の変化の可視化が重要です。客観的な分析を難しい操作なしで行えるHYOUMAN BOX。詳しくはこちらをご覧下さい。

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