オンボーディングとは?意味と人事が知っておきたいプロセス、施策事例を紹介

オンボーディングとは新入社員の早期活躍を目的として、組織全体でサポートする仕組みのことです。入社直後から実力を発揮し、早期離職防止にも効果があると言われています。

ただ、オンボーディングを効果的に実施するには、いくつか押さえるべきポイントも存在します。

そこで本記事では、オンボーディングの詳細や実施する目的、プロセスと成功させるポイントを、具体的な施策事例と合わせて紹介します。

【オンボーディングとは?人事における意味と詳細、背景を解説】

人事におけるオンボーディングとは、新しく入社するメンバーが組織にいち早く馴染み、活躍できるようにするための教育、育成を行うプロセスのことです。

まずは、近年オンボーディングが重要視されるようになった背景や、OJTとの違いについて確認していきましょう。

●オンボーディングが注目されている背景

企業にとって、新入社員の定着や早期に活躍できる環境づくりは重要です。

厚生労働省の調査によると、令和2年度の新規学卒就職者の離職状況は例年と比較して低下したものの、3年以内の離職率は高卒就職社は約4割(36.9%)、新規大卒就職者は約3割(31.2%)となっており、3人に1人は3年以内に離職しています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00004.html

組織に定着できない原因のひとつに、入社後短期間のフォローしかないことが原因に挙げられます。

また、企業文化に馴染めないことや、情報格差があることなどから、即戦力として活躍できていないケースも多いもの。

入社前から入社後までをサポートするオンボーディングは、組織への定着率の向上や、早期活躍を実現するための施策として注目されています。

●オンボーディングとOJTとの違い

オンボーディングと混合されやすいものに「OJT(On the Job Training)」があります。OJTは業務を実際に行いながら、仕事を覚えてもらう教育手法です。

オンボーディングプロセスの一部にOJTが含まれるとイメージするとよいでしょう。

【人事がオンボーディング施策を行う目的とメリット】

オンボーディング施策は企業だけでなく、従業員にもメリットがあります。それぞれ具体的なメリットの詳細を確認してみましょう。

●企業がオンボーディングを実施するメリット

企業がオンボーディングを実施するメリットは、以下です。

  • 定着率のUP(離職率の低下)
  • 生産性・成長スピードの向上
  • 教育格差・情報格差の軽減
  • 従業員満足度(ES)の向上

生産性が向上により利益率の向上が見込めるだけでなく、定着率が上がることで採用コストの低下にもつながります。

●従業員がオンボーディングを受けるメリット

従業員にとってのオンボーディングを受けるメリットは以下です。

  • モチベーションアップ
  • 心理的安全性の向上

入社して右も左もわからない不安な状態でスタートするのではなく、会社に慣れるためのプログラムがあることにより、会社のことを理解する機会を得られます。

【オンボーディングの具体的プロセスとは】

オンボーディングは入社直後のみ行うのではなく、入社前から入社後まで長期的に行うことが重要です。次に、オンボーディングを行う具体的なプロセスについて紹介します。

●STEP1.入社前|会社のビジョン・方針を明示する

入社前には、会社の雰囲気を知ってもらうことを重視しましょう。

会社のビジョンや方針を明示したり、社内コミュニケーションツールに招待し、人事をはじめ他のメンバーとのコミュニケーションの場を作ったりすることで、入社前の不安を軽減させます。

●STEP2.入社直後|目標設定を行い、期待値をあわせる

入社直後は、オリエンテーションを行うことで業務についての理解を促進させます。

働きだしてからのギャップや齟齬を防ぐためにも、目標を細かく設定してすりあわせて、企業との期待値をあわせるようにしましょう。

一般的に入社後のフォローアップは90日間が特に重要だといわれています。会社が求めていることを的確に伝え、今後必要とされることを自己判断していけるようにするためにも90日間は週次でフィードバックや1on1を行うなど、密なコミュニケーションを取ることがポイントです。

●STEP3.入社後(長期的)|メンターを中心に進める

入社して90日が経つと、会社の雰囲気や文化、メンバーのことをなんとなく理解し、業務にも慣れてきます。ただし、なんとなく理解したからこその疑問が出てくる時期でもあります。

この頃は、一歩深ぼった内容も聞きやすい環境を作り、今後の不安や悩みを解消することが求められるため、長期的に信頼関係を築けるメンターをアサインし、支えていける仕組みを作ることがおすすめです。

【人事がオンボーディングを進めるときに押さえるべき4ポイント】

次に、オンボーディングの成功率を高めるために知っておきたいポイントを紹介します。

●ポイント1.会社全体で迎え入れる空気感を人事部が作る

緊張の中、初めて会社や社内コミュニケーションツールに入ったときに「自分はこの会社から迎え入れられていない」と感じると、入社直後から疎外感を感じてしまいます。

人事や一部の人だけでなく、全社的に新入社員を迎え入れる空気感が重要です。人事が率先して土台を作っていくようにしましょう。

●ポイント2.長期的なサポートを視野に入れた計画を立てる

オンボーディングは入社直後だけ行うのではなく、成果を出せるようになるまでサポートすることが重要です。オリエンテーションをしてOJTに入り終了するのではなく、メンター制度などを通して長期的なサポートを前提にした計画を立てましょう。

●ポイント3.施策の検討時はリモートワークも念頭に置く

近年ではリモートワークでの勤務が増えており、実際に顔をあわせて働く期間が減っていることから、よりオンボーディングの重要性が増しています。

自宅で勤務している場合でも疎外感を感じにくくするための施策を検討することも重要です。

●ポイント4.メンターやトレーナーの育成を行う

オンボーディングで重要な役割を果たすメンター。勤務歴が長いと自然にメンターとなれるわけではないため、メンターやトレーナーとなる人への教育や育成も重要です。

また、メンターとメンティーが相互に信頼関係を築けるよう、キックオフやランチ会などを設定し、予算を与えるのも効果的です。

【オンボーディングの参考にしたい企業の具体的な施策事例3選】

オンボーディング施策を検討する際には、他社の事例も参考になります。自社の雰囲気や文化ならどのような施策があっていそうなのか、検討しながら確認してみてください。

●事例1.メルカリ

フリマアプリを運営する「メルカリ」のオンボーディングは、

  • 入社してからの詳細なToDoリストの作成
  • メンターが様々な部署のメンバーと引き合わせる
  • 日頃から社内wikiに情報をまとめ、オープンにストックする
  • リモートワークでもWelcomが伝わる背景画像の作成

などの手厚い事前準備から、「こんなにサポートしてもらったので、早く力になりたい」と思えるような感動体験を生んでいます。

また、リモート環境でもいち早く活躍できるようにするための資料の標準化やサーベイの設計などを行っていることも特徴です。

参考:https://mercan.mercari.com/articles/28680/
参考:https://mercan.mercari.com/articles/23339/

●事例2.LINE

コミュニケーションアプリを運営する「LINE」では、LINEを通じてなんでもチャットで質問できる社内サービス「LINE CARE」を運用しています。

「なんでも気軽に聞ける」という場があることも、オンボーディングにとって重要な要素。直接だと質問しにくいと感じる人のために、コミュニケーションのチャネルを選択できることが魅力です。

参考:https://seleck.cc/1239
参考:https://engineering.linecorp.com/ja/blog/inside-line-care/

●事例3.GMOペパボ

インターネット関連のサービスを提供しているGMOペパボでは、入社したエンジニアが、ペパボの一員と自覚し、組織に溶け込むために「メンターの決定」「懇親会の企画」「やっていきシート」「ふりかえり」を行う「ペパボカクテル」を実施。

入社した人が「会社でやっていきたいこと」を記載し、その実現に向けてメンターたちが支援する取り組みを行っています。

参考:https://tech.pepabo.com/2018/04/18/pepabo-cocktail/

【オンボーディングの実施にはツールの活用も効果的!】

オンボーディングの施策は、企業文化や雰囲気によって、また人によっても効果的な施策は異なります。どのようなアプローチが適しているのか知るためには、企業カルチャーや社員のパーソナリティーを定量化し、客観的データから判断することがおすすめです。

人材マネージメントサービス「HYOUMAN BOX」では、客観的な評価が難しいパーソナリティの定量化を行ったうえで、企業の持続的成長に必要なヒューマンスキルを定量化。どのような人材がどの程度の割合でいるのかなどを可視化します。

また、個人・部署・会社の変化を可視化することで、アクションプランの見直しや、データドリブンな戦略人事の示唆を行なえるようになります。

このような人材マネージメントツールを活用することで、会社やチーム、入社する人に必要なオンボーディング施策を感覚ではなく客観的データから判断できるため、積極的に活用することがおすすめです。

【まとめ:オンボーディング施策で企業と従業員双方の満足度を向上させよう】

オンボーディングは単に実施するだけでなく、人事と現場で目的意識のすり合わせを行い、長期視点で進めることが重要です。

本記事で紹介したツールなども活用しながら、会社そして新入社員のパーソナリティにあわせたオンボーディング施策を検討してみてはいかがでしょうか。

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