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在庫管理の現場では、「いつ、どのくらい発注すべきか」という判断が日々求められます。
この判断を誤れば、欠品による機会損失や過剰在庫によるコスト増大が発生し、企業の利益を圧迫します。
そこで重要になるのが発注点です。発注点を正確に計算し、その管理を自動化することで、欠品防止・在庫最適化・業務効率化を同時に実現できます。
本記事では、
さらに、発注点の精度を高める需要予測AIの活用方法もご紹介します。
発注点計算の自動化はもちろん、需要予測の自動化によって在庫管理を進化させたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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在庫管理において「発注点」は、次の発注を行うべき在庫数量を示す重要な基準です。この数値を明確に設定しておくことで、欠品による機会損失や過剰在庫による保管コストの増大を防ぎます。
発注点は、需要の変動やリードタイム(調達期間)を考慮し、安全在庫と日々の出荷量を組み合わせて決定されます。つまり、単なる「残数」ではなく、在庫が一定の水準まで減少したら自動的に発注するためのトリガーとして機能します。
発注点とは、「在庫がこの数量になったら発注を開始する」という基準値のことです。
例えば、平均的に1日100個出荷し、入荷までに5日かかる場合、最低でも500個(100×5)は必要になります。これに安全在庫を加えた数が発注点です。
役割のポイント
このように、発注点は在庫の安定供給を支える基盤となります。
混同されやすい概念ですが、発注点と安全在庫は目的が異なります。
| 項目 | 発注点 | 安全在庫 |
|---|---|---|
| 定義 | 発注を開始する在庫数量の基準 | 予期せぬ需要増や遅延に備える予備在庫 |
| 目的 | 欠品を防ぎつつ発注を適切に行う | 不確実要因から在庫切れを防止 |
| 関係 | 安全在庫を含めて計算する | 発注点の構成要素の1つ |
発注点は「通常の出荷分+安全在庫」で構成され、安全在庫はあくまで予測を外した時の保険です。つまり、発注点は安全在庫を内包する概念と言えます。
発注点は、「1日の平均出荷量」×「リードタイム」+「安全在庫」 というシンプルな式で求められます。
しかし、この3つの要素の算出方法や設定次第で、発注点の精度は大きく変わります。ここでは、それぞれの求め方と考え方を詳しく解説します。
1日の平均出荷量は、過去の販売・出荷実績から平均値を求めるのが基本です。
計算式は以下の通りです。
1日の平均出荷量 = 過去○日間の総出荷量 ÷ 日数
30日間で合計3,000個出荷した場合
→ 3,000 ÷ 30 = 100個/日
リードタイムとは、発注してから商品が入荷するまでの期間です。
これには、発注処理・仕入先での準備・輸送時間などが含まれます。
計算方法は次の通りです。
リードタイム(日)= 発注日から入荷日までの日数
発注日が1月1日、入荷日が1月6日の場合 → 5日
安全在庫は、予期せぬ需要の急増やリードタイム延長に備える在庫です。
一般的な計算方法は、需要やリードタイムの標準偏差を用います。
安全在庫 = z値 × 需要の標準偏差 × √リードタイム
上記3要素を組み合わせた基本式は以下の通りです。
発注点 =(1日の平均出荷量 × リードタイム)+ 安全在庫
→ 発注点 =(100×5)+ 200 = 700個
つまり、この場合は在庫が700個になった時点で発注を開始すれば、欠品リスクを最小限に抑えられます。
次の章では 、発注点をどう管理し、どう自動化につなげるかを解説していきます。
発注数を決定するための需要予測について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
発注業務における需要予測の重要性や手法、需要予測モデルがよくわかる内容になっています。
発注数を決定するための需要予測とは?おすすめのツールについても徹底解説!
発注点を正確に計算しても、その数値をどう管理し、どう活用するかによって在庫管理の成果は大きく変わります。
ここでは、代表的な管理方式と、自動化へ移行するためのステップを解説します。
発注点管理の基本は、以下の2方式に分類されます。
| 方式 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 定量発注方式 | 在庫が発注点に達した時点で、毎回同じ数量を発注 | 欠品防止効果が高い/在庫の適正化 | 発注のタイミングが不定期/多品種だと管理が煩雑 |
| 定期発注方式 | 一定間隔(例:毎週、毎月)で必要数量を発注 | 発注作業をスケジュール化できる/効率的 | 需要変動や遅延に弱く欠品リスクが高まる |
発注点管理は、エクセル(スプレッドシート)でも可能ですが、規模が大きくなるほど自動発注システムが有利になります。
| 項目 | エクセル管理 | 自動発注システム |
|---|---|---|
| 導入コスト | 低い | 高め(クラウド型は比較的低コスト) |
| カスタマイズ性 | 高いが属人的 | 標準機能+拡張性あり |
| 自動化 | 関数やマクロで部分的 | 在庫監視〜発注まで自動 |
| リアルタイム性 | 手動更新 | IoTやPOSデータで即時更新 |
適正在庫をエクセルで計算する方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
適正在庫の計算式やエクセルへの入力手順、エクセルで管理するメリット・デメリットがよくわかる内容になっています。
適正在庫をエクセルで計算する方法とは?
近年は、IoTやセンサー技術を使って発注点管理を高度化する企業が増えています。
1. 現行の発注点を正確に算出.
2. 在庫データの自動取得(IoT化)
3. 発注ロジックのシステム化
4. AIや需要予測モデルと連携し最適化
こうした自動化は、人為的ミスの削減と在庫回転率の改善に直結します。
次の章では 、発注点と自動発注の関係をより深く解説します。
自動発注は、あらかじめ設定した条件に基づき、在庫状況を自動的に監視し、必要なタイミングで発注を行う仕組みです。
この仕組みの中で、発注点は発注のトリガーとして重要な役割を果たします。ここでは、自動発注の基本構造とロジック、代表的な方式を解説します。
自動発注システムは、次の3つのステップで動作します。
POSデータや倉庫管理システム(WMS)、IoTセンサーなどからリアルタイムで在庫を把握します。
在庫数が発注点を下回ったか、または定期発注の時期が来たかを自動で判定します。
必要数量を計算し、仕入先や社内購買システムへ自動で発注データを送信します。
自動発注の多くは、以下の基本式を利用します。
発注点 =(1日の平均出荷量 × リードタイム)+ 安全在庫
システムは、在庫数がこの発注点を下回った瞬間に発注処理を開始します。
さらに、補充数量の計算には以下の式を組み合わせます。
発注数量 = 発注ロット または 最大在庫量 − 現在庫数
→ 発注数量 = 1,000 − 650 = 350個
このように、自動発注では発注点の精度がロジックの精度に直結します。
自動発注の方式は、大きく3種類に分類されます。
| 方式 | 説明 | 適用対象 |
|---|---|---|
| 補充点方式(定量発注型) | 発注点を下回ったら、あらかじめ決めた数量を発注。 | 安定した需要商品向け。シンプルだが変動に弱い。 |
| 需要予測方式 | 過去の販売データから将来の需要を予測し、発注量を計算。 | 季節商品や変動が大きい商品の在庫最適化に有効。 |
| AI型(需要予測+自動最適化) | AIがリアルタイムデータを学習し、発注点や数量を自動調整。 | 多品種・多拠点の在庫管理に最適で、精度向上と在庫圧縮を同時に実現。 |
まとめると、補充点方式はシンプルさが魅力、需要予測方式は精度重視、AI型は変化に強く将来性が高いと言えます。
次の章では、具体的なシステムの種類と特徴を整理していきます。
自動発注システムとは、在庫数や販売データをもとに、発注点の判定から発注処理までを自動化するソフトウェアです。
単なる在庫管理ツールではなく、発注判断をシステムが行うことで、欠品や過剰在庫のリスクを最小限に抑えることができます。
ここでは、自動発注システムの基本機能、導入形態、そして需要予測AIとの連携例を解説します。
多くの自動発注システムには、次のような機能が標準搭載されています。
自動発注システムは、導入形態によって特徴やコストが変わります。
| 形態 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| クラウド型 | インターネット経由で利用 | 初期費用が低い/最新機能を自動反映 | ネット環境必須/カスタマイズ制限あり |
| オンプレミス型 | 自社サーバーに構築 | 高いカスタマイズ性/セキュリティ制御 | 初期費用高額/保守負担大 |
| IoT連携型 | センサーやRFIDで在庫自動計測 | リアルタイム精度が高い/人手削減 | 機器導入コストが高い |
選定の目安
近年の自動発注システムは、AIによる需要予測と組み合わせることでさらに精度を高めています。
例えば、AI CROSSの「Deep Predictor」などの需要予測AIは、単なる過去データ分析にとどまらず、リアルタイムの販売変動にも対応できる柔軟性を備えています。これにより、欠品や在庫過多をより確実に防ぐことが可能になります。
次の章では、自動発注を導入した場合の利点と注意点を整理します。
自動発注システムは、発注業務を効率化し、在庫の最適化を実現する強力なツールですが、導入には注意点もあります。
ここでは、メリットとデメリットを具体的に整理します。
従来の手作業による在庫チェックや発注判断が不要になり、担当者の業務時間を大幅に削減できます。
これにより、スタッフは販売戦略や顧客対応など付加価値の高い業務に集中できます。
リアルタイムで在庫状況を監視し、発注点を下回ったタイミングで自動発注するため、欠品リスクと在庫過多の両方を防止できます。
特に多品種を扱う業態では、手作業では困難な精度を実現可能です。
欠品や在庫過多の抑制は、保管コスト・廃棄コストの削減につながります。
また、発注基準がシステムに組み込まれるため、担当者の経験や勘に依存する「属人化」も解消されます。
システム導入には、初期設定費用やライセンス料、保守費が発生します。
クラウド型は比較的低コストですが、オンプレミス型やIoT連携型は高額になる傾向があります。
発注点や需要予測の設定が不適切だと、過剰発注や欠品が発生する可能性があります。
特に、需要変動の大きい商品や季節商品の場合、単純な発注ロジックでは変化に対応できず、在庫の偏りが生じやすくなります。
さらに、自動発注のシンプルな方式は導入・運用コストを抑えられる反面、需要予測の精度は限定的になりがちです。
逆に、AIや高度な予測モデルを導入すれば精度は向上しますが、その分システムが複雑化し、初期費用・運用コストが増加します。
つまり、自動発注の簡便さと需要予測精度の高さはトレードオフの関係にあるため、自社の在庫特性や求める精度に応じてバランスを取ることが重要です。
新しいシステムを使いこなすには、現場担当者の教育や運用ルールの整備が必要です。
教育不足は、誤操作やシステム放置につながり、導入効果を損ないます。
自動発注システムの導入は、初期費用や運用コストだけでなく、自社の在庫特性・業務フロー・将来の拡張性を考慮して選定する必要があります。
ここでは、導入費用の目安、選定時のチェックポイント、そしてサポート・運用体制の確認方法について解説します。
| 項目 | クラウド型 | スクラッチ型(オンプレミス構築) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 数万円〜数十万円 | 数百万円〜数千万円 |
| 月額費用 | 数千円〜数万円 | 保守費用:数万円〜数十万円/月 |
| 導入期間 | 数日〜数週間 | 数ヶ月〜1年以上 |
| 特徴 | 初期投資が少なくスピーディー導入 | 高度なカスタマイズが可能だが高コスト |
システムを比較検討する際は、次の項目を確認しましょう。
1. 機能面:発注点管理、需要予測、在庫可視化、仕入先連携など必要機能が揃っているか
2. 拡張性:将来的に取扱品目や拠点が増えても対応できるか
3. データ連携性:POSやWMSなど既存システムとスムーズに連携できるか
4. 操作性:現場担当者が直感的に使えるUIか
5. カスタマイズ性:自社の業務ルールや計算式を組み込めるか
導入後の効果を左右するのは、ベンダーのサポート力です。
特に以下を事前に確認しておくことが重要です。
サポート体制が不十分だと、現場でシステムが使われなくなり、投資が無駄になるリスクがあります。
次の章では、実際の活用事例と成功ポイントを紹介します。
自動発注システムは、小売業・製造業をはじめ多くの業界で導入が進んでいます。
ここでは、小売業界と製造業の事例を挙げながら、導入によって得られた効果と成功のポイントを解説します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 導入背景 | 店舗ごとの在庫管理が属人的で、欠品や過剰在庫が頻発 |
| 導入内容 | POSデータ連動型のクラウド自動発注システムを導入 |
| 効果 | 欠品率が30%以上改善、発注作業時間が1店舗あたり1日平均30分削減、廃棄ロスが年間1,000万円削減 |
需要変動が大きい生鮮食品は、AI需要予測を組み込むことで予測精度を向上させ、在庫ロスを最小化。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 導入背景 | 部品の納期が長く、欠品によるライン停止が発生 |
| 導入内容 | ERPと連携したオンプレミス型自動発注システムを構築 |
| 効果 | 生産ラインの停止回数がゼロに、在庫回転率が20%向上、部品調達リードタイムを平均2日短縮 |
BOM(部品構成表)と連動させ、必要部品を事前に確保する仕組みを作ることで、生産の安定性が向上。
これらの事例からわかるように、自動発注システムは正しい運用とデータ活用によって、欠品防止と在庫最適化を同時に実現できることが確認されています。
次の章では、導入後の運用で注意すべきポイントを整理します。
発注点を自動計算しても、設定や運用を誤ると欠品や過剰在庫の原因となります。
ここでは、自動発注運用で失敗しないために押さえておくべき注意点を3つにまとめます。
発注点計算は、平均出荷量・リードタイム・安全在庫を正確に設定することが前提です。
計算式や条件設定を誤ると、在庫が適正水準から外れ、欠品や在庫過多を招きます。
特に、需要変動の大きい商品やリードタイムが不安定な商品は、AIや需要予測モデルを活用して動的に調整することが有効です。
どれだけ高性能な自動発注システムを導入しても、担当者が仕組みを理解していなければ効果は半減します。
市場環境・需要パターン・サプライチェーンの状況は常に変化します。
そのため、発注点や安全在庫の設定は定期的に見直す必要があります。
ポイント
「一度設定したら終わり」ではなく、PDCAサイクルを回して継続的に改善することが、発注点自動計算の成功につながります。
発注点の精度を高めるためには、正確な需要予測が欠かせません。
しかし、手作業や単純な統計計算では、季節変動や突発的な需要変化まで的確に反映することは困難です。
そこで有効なのが、AIによる需要予測ツールの活用です。
Deep Predictorは、AI CROSS株式会社が提供するノーコードAI予測分析・意思決定支援サービスです。
プログラミングやデータサイエンスの専門知識がなくても、現場担当者が自ら予測モデルを作成し、需要予測や売上予測を行える点が特徴です。
Deep Predictorは自動発注機能を備えていませんが、発注点設定に必要な需要予測の精度を大幅に向上させることが可能です。
例えば、以下のような活用が考えられます。
1. 季節変動の反映
季節やイベントによる需要の増減を予測し、安全在庫の変動幅を最適化。
2. 異常値の検知
突発的な需要急増・急減を検出し、発注点の臨時調整に活用。
3. シナリオ比較
「通常」「キャンペーン時」「値上げ後」など複数シナリオを比較し、最適な発注基準を決定。
こうした予測データを自動発注システムに連携すれば、発注点の算定精度が向上し、欠品や在庫過多のリスクをさらに低減できます。
1. Deep Predictorで過去の販売データを学習させ、需要予測モデルを構築
2. 予測結果から平均出荷量・安全在庫を算出
3. 発注点計算式に反映し、発注点をアップデート
4. 自動発注システムに新しい発注点を登録
5. 定期的に需要予測を更新し、発注点を継続的に改善
Deep Predictorは「直接発注するツール」ではありませんが、「発注点の精度を高めるための需要予測エンジン」として活用することで、大きな効果を発揮します。
在庫を適正化するなら需要予測AIの活用がおすすめ
需要を高度に予測することで、適正な在庫状態を実現
→資料を見てみる
発注点は、在庫管理の要となる数値であり、その精度が欠品や過剰在庫の発生率を大きく左右します。
発注点を正しく算出し、システム化することで、発注業務の効率化・在庫コスト削減・販売機会の最大化を同時に実現できます。
本記事で解説したポイントを整理すると、以下のようになります。
重要なのは、発注点計算を一度決めたら終わりにせず、継続的に改善することです。
市場の変化や顧客ニーズに柔軟に対応できる仕組みを作ることで、在庫管理は企業競争力の源泉になります。
発注点計算の自動化は、単なる効率化ではなく、在庫管理の質を飛躍的に高める経営戦略の一部です。
今こそ、自社の発注点管理を見直し、自動化と需要予測の力で在庫管理を変革していきましょう。